遊子水荷浦の段畑
ゆすみずがうらのだんばた

文化的景観の紹介

宇和島市は愛媛県西南部に位置し、その沿岸には延々とリアス式海岸が続いていますが、その地形と温暖な気候とが相まって、柑橘栽培と魚介類養殖が国内屈指の規模で営まれています。遊子水荷浦はその中の小さな岬にある37戸の集落ですが、ここには近世から続く半農半漁の営みを今でも見ることができます。

昭和40年代に柑橘や魚介類養殖が軌道に乗り始めるまで沿岸部の生活は過酷なものでした。鰯を追い求めるため狭小で水に乏しい地に居を構え、生をつなぐために急峻な斜面一面を開墾していく、山海に昼夜を問わず休む間もなく働き続ける人びとの姿は沿岸部ではありふれた風景でした。しかし、産業をはじめとした社会環境の変化がそのような風景を消し去っていきました。

かつてを彷彿させる段々畑が、水荷浦にのみ残った最大の要因は、住民の方々の先祖への強い畏敬の念があったからに他なりません。それは平成12年度に結成された地元保存団体「段畑を守ろう会」に引き継がれ、4月には公式HPを立ち上げるまでに至りました。

行政においては、平成20年度から4か年かけて、国・県の支援を受けながら、0.8haの休耕地の復旧に取り組んでおり、2haまでに落ち込んでいた畑地は５haまで回復する予定です。また地元農協で水荷浦産ジャガイモのブランド化が図られるなど、産官民が一体となった地域活性化に広がっています。

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